青春ing
「……何か、頭痛くなってきた。お前ら、本当に兄弟なのか?」

「よく言われます。姉がコレなんで、私がしっかりしないといけないんですよね。」

「えーっ!翠ちゃん酷い!!ウチ、家ではちゃんとお姉ちゃんやってるじゃん!!」

「……素直に頷けない。」



 姉妹にはとても見えないけど、ある意味丁度良いバランスなのかもしれない。客観的に考えたら、そう思った。

 よく分からないけど、兄弟が居るのは楽しそうだな。そう話したら、今度遊びに来いと言われたので、考えておくと答えておいた。

 ――おかしいな。何ですぐに断らなかったんだろう。鬱陶しいと思っていたヤツの、意外な一面を見たからか?

 考えてみたけど、回答は出そうにない。ひとまず、井上と妹が家に入るのを見届けて、自分も帰途に着いた。

 ――それからは、オレと在と井上の三人でよく話すようになった。顔を見ただけで苛々していたこともあったけど、今ではさほど気にならない。むしろ、普通に会話できるようになったくらいだ。



「あ。健ちゃん!ウチ昨日ね、翠ちゃんと一緒にナンプレやったんだよ!」

「へぇ、どうだった?」

「難しかったー!一個しか解けなくて、隣で翠ちゃんがサクサク解いちゃうから超ヘコんだし!!」

「流石だな、妹は。井上も、もっと頑張れよ。」

「はーい……在君、ウチらも頑張ろうね!」

「大丈夫!俺は一生ナンプレ見ないから!」



 こんな風に他愛のない話をしながら、休み時間が過ぎていく。前よりも苛立ちを感じる時間が少なくなった、という自覚もある。内面が変わったからか、周りの景色も違って見えるようになった。

 昔は、授業中に先生に当てられて答えられなかった奴を“低能だ”と馬鹿にしていたことがあった。でも、それが何だか良くないことのように思えてきたのだ。

 成績の良し悪しだけじゃ、人間性は決まらないのかもしれない。エリートだけが素晴らしい訳じゃ、ないのかもしれない。オレが本当にやりたいことは、まだ見つかってないんだもんな。ただ漠然とした理想を追いかけて、勉強をしてきただけだったから。
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