青春ing
「……ウチ、卒業したら読む雑誌変えようかな。」

「それが賢明だな。むしろ、今から買って予習しておけ。」

「そっかー……じゃあ、家でメイクの練習する!あ、もちろん勉強もちゃんとするからね!!」

「それは当たり前だ。」



 笑うタイミングが重なって、どうしてだか、胸の奥が温かくなる。何だろう、この感じは。そう思った時、丁度在達が帰ってきた。エコだからと琥珀の妹が持っていったショッピングバッグを、それぞれの手に。



「ただいまー!何なに、二人で盛り上がってたのー?」

「随分楽しそうでしたね。廊下まで聞こえてましたけど。」

「騒いでたのはこいつだけ。オレはいつも通りだ。」

「健ちゃんひどい!健ちゃんも共犯!!」

「いや、別に悪いことはしてないと思うんだけど……」



 そんな話をしながら、二人が買ってきてくれたドリンクとお菓子をつまむ。それからまた机に向かって、三人の勉強を見てやる。その傍らで、自分も参考書を進めていった。

 夏だから、まだまだ日が落ちない。午後6時だというのに、外は未だに明るかった。これから徐々に暗くなってくるだろうから、その前においとますることにした。



「えー、夕飯食べてけばいいのにー……」

「お姉ちゃん、あんまり引き止めたら迷惑だよ。お二人共、気を付けて帰って下さいね。」

「あぁ、こいつのことは頼んだからな。今日出した宿題、きちんとやるかどうか見ておいてくれ。」

「あはは!健ってばほんとに先生みたいじゃん!!」



 明日から、また補習だ。でも、長い休みは、あと一週間程で終わってしまう。本当に、あっという間だったな。そんなことを思いながら、ふと耳に入った蝉の声に意識を傾ける。

 ――この音が聞こえなくなる頃までには、名前を呼んでやっただけでやけに嬉しそうに笑うこの女と居る時に感じる、訳の分からない感情の正体もはっきりしていたら良いのに。そう思った。
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