青春ing
 小さめのかぼちゃを半分、ラップをしてレンジにかける。1分くらいすると割と柔らかくなったので、皮をむいて潰す。この作業が、面倒だけど楽しいとも感じた。



「佐桜花さん、力仕事も嫌がらないでやる人なんですね。」

「そりゃあピッチャーだしね!調理実習でも、こういうのだけは女の子に頼りにされてたんだよ。」

「女の子って、佐桜花さんも女の子じゃないですか。」



 何がおかしかったのか、クスリと笑った和屋君。そのまま水でゼラチンをふやかして、レンジにかけてくれたので、自分は卵の卵白だけを取り出して、かき混ぜる作業に徹した。

 卵白がホイップクリームのようになる頃には、和屋君はゼラチンと豆乳、かぼちゃを混ぜていた。最後にお互いのボウルの中身を合わせて混ぜ、冷蔵庫で冷やす。その間に、しょうが焼きを作ることになった。

 和屋君がトマトとしょうがをすりおろしてくれている間、教えてもらった通り、豚肉の下ごしらえをする。塩コショウをしてから小麦粉をまぶして、和屋君が作ってくれたソース(さっきすりおろしたものと、醤油・水・お酒で作っていた)を絡めたら、フライパンで色が変わるまで焼く。食欲をそそる、いい匂いがした。



「じゃあ、付け合せのキャベツを切りましょうか。ゆっくりで良いから、包丁にも慣れないと。」

「が、頑張ります……」

「俺も最初は、ほんと恐る恐るって感じでした。その内自分のペースでできるようになるから、心配しなくて良いですよ。」



 キャベツの千切りは、とにかく細く、細く。何とか盛り付けにも成功して、冷蔵庫からムースを取り出して、器に移す。ミントの葉っぱも乗せたら、カフェで出せそうなくらいの完成度だな、と心の中で思った。



「できましたね!じゃあ、早速食べましょうか。」

「おいしそー……いただきます!」



 一口食べて、言葉を失った。あたしにも、こんな料理を作ることができるんだ……お母さんに、もっと教えてもらえば良かったな。

 おいしい、おいしいと言いながら、あっという間に平らげてしまったあたし。和屋君は“女の子らしく食べろ”なんて言うこともなく、「そんなにおいしそうに食べてもらえるなんて、教えた甲斐がありました」と笑ってくれる。同級生の男の子みたいに“男らしい”なんて言われなかったことが珍しく感じると同時に、少しだけ気恥ずかしかった。
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