青春ing
 突然の重みに負けて、廊下に膝を付く。背中に張り付いている主(ぬし)はキャハハと楽しそうに笑っているけど、良い迷惑だ。

 ――またこいつか。嗅いだ覚えのあるキツめの香水でそう思って、後ろに振り返る。



「比奈子ちゃん、やめてくれない?何回も言った筈なんだけど。」

「やっだー!美隼君冷たーい!!そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうぞぉ?ま、比奈子には溺愛されてるけどねー!」



 飯島比奈子。今日が自分と初対面の人が居たら、比奈子ちゃんの今の一言を聞いて頭に“はてなマーク”が浮かんだかもしれない。俺、谷口美隼は正真正銘の男だ。今は事情があってこんな格好をしてるけど、普段はちゃんと学ランを着て男子高校生をやってるんだよね。

 どうして今日はセーラー服姿なのかというと、「今年の各種学校案内のパンフレットに、セーラー服姿の君を載せたくてねぇ……卒業する前に撮らせてよ」と言った変態校長のせいだ。で、撮影を終えて着替えに行こうとしていた所をブタとプレイボーイに捕まった、というのがさっきまでの流れってわけ。
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