【実話】ありがとう…。
「大丈夫です。気にしないで下さい」

そう言い、微笑む。


暫くして、朝御飯の用意が出来、お兄さんが声を掛けてくれた。


「望ちゃんも一緒に食べよう。こっちに座りなよ」



「ありがとうございます。でも…食欲無いんで…」



「そっか…」



「お兄さん、私1回家に帰ります。シャワー浴びて、着替えして来ます」



「分かった。気を付けてな」



「はい」


バスに乗り、家に着くと、母が出迎えてくれた。


母の顔を見た途端、大声で泣いた――。


「たかさんが…たかさんが…死んじゃった…ウワーッ…」


母親は私を抱き締め、

「辛かったね…よく頑張ったね…泣きなさい。泣きたいだけ泣きなさい!」

そう言い、小さな子供をあやすように優しく抱き締め、一緒に泣いてくれた―‐。


こんなにも、大声を出し、泣いたのは子供の頃以来無かった。


「ごめんね…お母さん」



「落ち着いた?」

コクりと頷き、母から離れた。


「シャワー浴びて来る」


浴室から戻り、着替えを済ませ、ボーッと窓の外を眺める―。


行きたくなかった…。

病院に居ても、叔母さんの家に居ても、居心地が悪く、居場所が無かった。


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