【実話】ありがとう…。
ただ…お兄さんが気を使ってくれたから、居られただけ。


「たかさんの所に行かなきゃ…」


またバスに乗り、叔母さんの家に向かう。


叔母さんの家に着き、お兄さんと話をしていると、傍に誰かが立った。


見上げると、たかさんが少しだけ年を取った感じの男性が私を見て、

「望ちゃん、初めまして。次男の秀之です」

と優しく微笑んだ顔が…声が…たかさんにソックリで、泣けた―‐。


挨拶をするのも忘れ、

「…秀之さん…たかさんにソックリ…だね…。たかさんが…目の前…に居るみたい…グスッ…」

それだけを言うのが、精一杯だった。


たかさんの傍に居て、ただボーッと時間が経つのを眺めていた。


やっぱり居心地が悪く、夜の8時に兄に電話して迎えに来て貰った。


車に乗り込むと、

「望―。どんなに良い奴でもちゃんと仕事してないと、悪く言われるんだぞ。アイツも、もっと早く病院に行ってれば、治ったかもしれないのにな…。俺だって、知らない訳じゃないから、胸に重たいものあるんだぞ」



何も言えなくて、ただ泣く事しか出来なかった…。


部屋に戻っても凄い線香の匂いが漂っている。


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