【実話】ありがとう…。
今まで着ていた制服もブカブカになった。


そんな私の様子を見て、周りの人間は―。

「もう忘れなよ。時間が解決してくれるから」

そう簡単に言う。


心配してくれるのは、とても有りがたかった。


でも今は、放って置いて欲しい…。


大切な人を亡くして、簡単に忘れられる程、私は器用な人間じゃない。

皆は、自分じゃないから簡単に言えるんだよ。

自分が同じ立場になった時、同じ事を言われて、納得出来る?

私の心の中は、誰にも分からない。





たかさんに会いたい…。

おいでって抱き締めて欲しい…。

体が悲鳴をあげていた。

助けて…。

辛いよ…。

楽になりたい…。

もう…疲れた―。



偶々買い物に行った店で、智兄の奥さんのお母さんに会い、声を掛けられる。


「体重くない?おぶさってるよ。暫くお水を上げてあげたら大丈夫だから」



ねぇ、たかさん…。

一人で逝くのが嫌なら、迎えに来てくれて構わないよ…。

一緒に逝ってあげる…。

もう、たかさんの居ないここには居たくないんだ。

今の私の目に映るここは、たかさんと居た頃と違って、色が無いの―。

もう…何もいらない。


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