【実話】ありがとう…。
「部屋、片付けなきゃいけないの…。手伝ってくれる?」



「はい」


2人で病室に行き、片付けていると、たかさんがいつも身に付けていた指輪が出てきた。


前にその指輪が欲しくて、冗談でねだったら、

「誕生日に、新しいの買ってやるよ。もし買ってやれなかったら、これやるから!」

って言って、結局買ってもらえる事は無かったよね。

だから…形見にどうしても欲しかった。


「お母さん…この指輪貰っても良いかな?」



「良いよ、望にあげるから」



「ありがとう、お母さん」

直ぐに指輪を自分の中指に填めた。


病室も片付け終わり、霊安室へ向かう。


少しすると、たかさんが戻って来た。


傍へ行き、手を握る。

「たかさん…まだ温かいよ」


温かかった手が、急激に冷たくなって行く―。


ポタッ……ポタッ……今まで泣けなかったのが嘘の様に、涙は次々と溢れ止まらない。



たかさん、ごめんね…。

間に合わなくてごめんね…。

苦しかったよね、辛かったよね…。

やっと楽になれたね。

もう…ゆっくり休んで良いんだよ。

お疲れ様…たかさん。


次々にたかさんの訃報を聞きつけ、親戚や親友も駆けつける。


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