【実話】ありがとう…。
少しすると、病院側から、若い人には珍しい癌なので、死亡解剖させて欲しいと話があり、お母さんは受け入れ、たかさんは連れて行かれてしまった―。


部屋の隅に座り、ボーッと天井を眺めていた。

2時間後、棺に入り、たかさんが戻って来た。


各自各々に車に乗り、次々と帰って行く。


私は、ただ呆然とその光景を眺めていた。


「望ちゃん?」

振り向くと、長男の智之さんが立っていた。


「覚えてる?」



「はい…」



「お袋と叔母さんは、たかと一緒に車に乗ったけど、望ちゃんは車?」



「いえ」



「じゃあ、俺の車に乗って来なよ」



「でも…」



「たかが散々、世話になったんだから、遠慮しない!ね?」



「はい…すいません」


車に乗り込むと、助手席に奥さんがいて、優しく声を掛けてくれる。


暫くして、お兄さんが、

「たかから望ちゃんの事は、聞いてたよ。地元に居る時は、毎日来てくれて、札幌に来てからもよく来てくれたって。本当にありがとうね」



「いえ…」



「アイツ…いっぱい迷惑かけたんじゃない?」



「…そんな事…ないです」



「そっか…」


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