落日
「ははっ。そうだろうと思ってた。昨日、依子と電話で話したあとにさ、シフトを変更してもらったんだよ」
「そうなの?」
「とりあえず、行こうか」
「……うん」
聡は私の肩を優しく抱き寄せると、駐車場の方へと歩いて行く。
そして、駐車場の隅に停められた漆黒の大きなセダンの方へと近づき、鍵を開ける。
「えっ、聡……。車、持っていたの?」
「へっ?」
聡が車を持っていたことを知って、私はひどく驚いた。
別にたいしたことでもないだろうけど、その車は、聡が住んでいるマンションと同様に、カフェの店員には不釣合いな高級車だったから。
「乗って?」
呆然と立ちすくんでいた私に、いつのまにか運転席に乗った聡が助手席のドアを開け、乗るように促す。