落日
7.籠のなかの燕
「本日付で異動になりました、萩原です。宜しくお願い致します」
異動初日。
私は極度の緊張を抱えながら、社長室にいた。
初めて入る社長室は、空気からして違っていた。
深紅のカーペットに、高級な調度品。
黒の革張りのソファ。
その部屋の一角には、空っぽの鳥籠が置いてあった。
「今日から頑張ってね。まずは室長の添田さんについてちょうだい」
「はい」
社長は座り心地の良さそうな椅子に身体を預けることなく、姿勢正しく座っていた。
『凄腕の女社長』
聡が言っていた言葉どおりの貫禄がある。