落日
誠司と再び過ごし始めた日々。
結婚の話も本格化してきて、式場のことが頻繁に話題に上るようになった。
「挙式はやっぱり教会かな……。いや、そのまえに、場所だよな」
ネットや雑誌で情報収集する誠司は、私よりもやる気があった。
私は結婚情報誌をパラパラとめくり、ぼんやりと結婚について考える。
「依子はどこがいいと思う?」
情報誌をチェックしながら訊いた誠司に、私はポツリと呟くようにして答える。
「……ヴェッキオ宮……」
「えっ? ヴェッキオ宮って確か……イタリアだっけ?」
「――うん。……そこじゃないと嫌だ……」
自然と、そんな言葉が口をついて出てくる。