落日
大理石のテーブルにカップを置いたあと、誠司は改まった態度で私に言った。
「卒業したら、ここに一緒に住まないか?」
少し照れくさそうに言う誠司に、私は意地悪そうに笑いながら答えた。
「一緒に住むのは結婚してから。誠司のお父さんにもそう言われているでしょう?」
まるで母親のような口調で諭す私に、誠司は柔らかい笑みを浮かべて「そうだったな」と返した。
誠司はいつだって一枚上手だ。
今みたいに、誠司を手のひらで転がしたくなるときもあるのに。
誠司は決して私の思い通りにならない。いつも私より上をいっている。