落日
3.再会
「ねぇ、どうするの? せっかく会えたんだから、なにか話でもしたら?」
オーダーしたケーキがまだ残っている状態で、私たちは聡がサービスしたシフォンケーキに手をつけていた。
聡はスマートな動きで店内を回り、涼しげな笑顔を振りまきながら働いている。
ドゥオーモで見たときとは違う笑顔。
私は、聡の姿を逐一、目で追っているのに気づく。
「ねぇ、依子ってば。聞いてる?」
「あっ、うん。でも仕事中だから、今日はやめとく」
「……だねー。まぁ、ここに来れば、いつでも会えるわけだし」
――いつでも会える。
それだけの、何気ない香織の一言に、胸の奥がじわりと熱くなる。