落日
5.ベネチアングラス
私の部屋にある、木目のキャビネットのうえ。
そこには、大事なものを、いつだって目に入るように飾っていた。
満開の桜の木をバックに撮った私と誠司の写真。
誠司にもらった、私には不釣合いの高級ブランドのアクセサリー。
誠司との思い出が所狭しと並べられていた。
でも今は、寂しいくらいにスッキリと片付けられ、そこにあるものは、たったひとつのもの。
聡と再会した日にもらった深紅のベネチアングラス。
ただそれだけが、キャビネットのうえで、私を見つめていた。