グラウンド【短】
「はやっ・・・」
早瀬、と言いかけたとき腕を引っ張られ、抱きしめられた。
「・・・・はぁ~。お前、気づくの遅いん」
「・・・っ早瀬ぇ・・・」
あたしも早瀬に抱きつく。
涙が溢れるのを、気づかれたくないから。
「・・・何や」
「好きっ・・・!」
「・・・そんなんずっと前から知っとるわ。」
・・・早瀬、
好き
好き
大好き。
「・・・ほんと、鈍いんよ大塚は。
―俺だって好きだよ。」
精一杯だった。
あの子より想われたくて
あの子より見てもらいたくて
爽やかな陸上の世界に、あたしの気持ちだけぽつんと、黒いシミができているようだった。
・・・でも、早瀬はあたしを見てくれてて。
あたしの恋も、陸上みたいな爽やかな恋だと思えた。
だって、心にいつもあるのは、『好き』っていうシンプルな想いだけだったから。
*END*