グラウンド【短】




さっきの朝練を終えて、さっさと着替えを済ませていた早瀬に駆け寄って声をかけた。

・・・「早瀬っ」

小さく、ん?と返事をしてこっちを向く早瀬に笑みがこぼれる。


「100mのタイム、何秒?」

あたしたちはどちらも100m走の選手なのだ。

「・・・お前の半分やし」

そうして、にやりとバカにするような笑い方をする。
コイツはいつもこんな調子だ。

「嘘つけ、ほんとの教えろ~」

その後に教えてもらったタイムに、唖然とする。

「嘘っ!なんで2秒も差あんの?!」

「お前みたいにサボッてないけんやろ」

あたしがムッとした表情をすると、早瀬はまたバカにしたような笑い方をした。
・・・言い返せないのは、あたしが本当に練習をサボッてるから。

「でも、女子では1番やもん!」

「俺は男子で1番。女子と男子じゃあ違うんや」


・・・そんなの、もうとっくに知ってるよ。

小学生の頃は5cmしか変わらなかった身長が、今はもう20cm近くも違うこととか、あたしよりも2周りは大きい手とか、足とか。



そんなとこに、どきどきすんだよバカ。


「ふ~ん・・・」




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