グラウンド【短】






_.....


「ちょっっ!そこの席あーたーしー!!」

「うっせ、荷物置いてないのが悪いんじゃ!」

大会がある競技場まで向かう貸切バスの中。
さっそくあたしたちは大声で言い合いをしていた。

1番後ろの広い席の1個前の席。
さっきまであたしはそこに座ってて、飲み物を買いに行ってる間に早瀬に盗られてしまっていた。

「だって普通荷物は上に置いとるやーん!」

「はぁー?聞こえませーん!」

なんともガキっぽい。
そんなあたしたちに顧問の先生が呆れて言ってきた。

「座るところ2つあるんやけん、そこがいいなら2人で座れ!」

「は~い・・・」


ということで、あたしと早瀬は隣同士で座ることに・・・てか、地味に、嬉しいわコレ。

バスの中は皆話したりしてにぎやかだ。





「・・・早瀬。」

「ん?」

窓の外を見たまま早瀬が返事をする。
表情がわからない。

「大会、北中の人も出るんだって」

「・・・へぇ。」

早瀬はどんな気持ちで居るんだろう。
あたしは足元に視線を落としながら考えた。

―北中は、あたしの中学(南中)とあまり遠くないところにある中学。
陸上はあたしの学校ほど強くはないけど、そこらへんの学校より強い。

・・・問題はそこじゃなくて。


そこには、早瀬の想ってる人がいる。

今年で3回目だ。
1回目は疑い、2回目は確信だった。



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