グラウンド【短】







・・・・『第1レーン、大塚遥。第2レーン、桜井陽菜子―』

あの子は、第2レーン。
隣のレーンというのが、余計にあたしの闘争心を燃やした。


ちらりと応援席を見てみる。
早瀬がこっちを向いているのがわかるけど、遠いからあたしか、あの子をかどちらを見ているのかわからない。

・・・今はあの子を見ていてもいい。
絶対にあの子を抜いて、あたしに瞳を向けさせてやる。

心も、一緒に。

出所のわからない、自身が沸いてくる。
それが走るパワーになる。


―『あの子には、負けない。』



パァンッ!

気持ち良く、スタートの音が鳴った。

瞬間、あたしは勢い良く飛び出した。




―はずだった。


勢い良く飛び出したせいで、あたしは前のめりになり、転倒してしまった。

どうしよう。100mしかないのに、転倒なんてしてしまったら―


「大塚ッ!!走れぇッ!!」

彼の声を聞いた瞬間、あたしはまた飛び出した。


転倒なんて関係ない。

あたしはただ、1位を狙うだけ。


< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop