グラウンド【短】
・・・・『第1レーン、大塚遥。第2レーン、桜井陽菜子―』
あの子は、第2レーン。
隣のレーンというのが、余計にあたしの闘争心を燃やした。
ちらりと応援席を見てみる。
早瀬がこっちを向いているのがわかるけど、遠いからあたしか、あの子をかどちらを見ているのかわからない。
・・・今はあの子を見ていてもいい。
絶対にあの子を抜いて、あたしに瞳を向けさせてやる。
心も、一緒に。
出所のわからない、自身が沸いてくる。
それが走るパワーになる。
―『あの子には、負けない。』
パァンッ!
気持ち良く、スタートの音が鳴った。
瞬間、あたしは勢い良く飛び出した。
―はずだった。
勢い良く飛び出したせいで、あたしは前のめりになり、転倒してしまった。
どうしよう。100mしかないのに、転倒なんてしてしまったら―
「大塚ッ!!走れぇッ!!」
彼の声を聞いた瞬間、あたしはまた飛び出した。
転倒なんて関係ない。
あたしはただ、1位を狙うだけ。