FIVE STAR
――
「あ、ごめん。待った?」
「ん。いや、いいよ。じゃ、帰ろっか」
空は夕焼け色に染まっていた。
「…何話したの?」
「もう二度と現れんなって。そんくらい」
ホントに?そう聞きたかったけどやめることにした。
「中から…見えた??」
「だから、助けにいったんだけどな」
春樹はいつも笑顔でいるよね。
「うん…ありがとう」
「多分もうあいつこねぇよ。…多分な?万が一の時は俺が助けてやる」
「…うん」
今一番胸がドキドキしてる…。
どうせ春樹は私の気持ちなんか知らないんだから。
私はいつのまにか歩くスピードを遅めていた。
春樹の広い背中。思い切って抱きついてみたい。
好きな人と手をつないで、温もりを感じて…。
「どした?」
「なんでもないよ」
後ろを見てみると春樹と私の影。
丁度、手と手がつないでいるみたいにコンクリートに写った。
こんなことでも幸せだって思えるのはすごいことだね。
いつか伝えてみたい。
まだ言える勇気なんてないけど、いつか春樹に伝えるんだ…。