FIVE STAR
風と共に
「美優ちゃん、迷惑かけるねぇ」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
私は今介護ヘルパーとして働きだし、今日は平井信子[ヒライノブコ]さんのヘルパーさんとして来ている。
なんだか懐かしい和風の家にその平井さんは住んでいる。
「美優ちゃん、そろそろ休憩したらどうだい?」
「まだ大丈夫ですよ!たった2時間しか経ってませんし…」
最近、思ったことがある。働くっていうことが好きになっている。
「若い子は違うねぇ。でも、休んでおくれよ」
「そうですか?」
平井さんの言葉に甘えて、少し休むことにした。
「ここに来てくれるかい」
「はい、なんでしょう」
平井さんは足腰が悪く、ほとんど寝たきりのおばあちゃん。普段は娘さん夫婦がいるみたいだけど、この1週間、その夫婦は海外に旅行しているらしい。そして、今日はその3日目。
「いつも世話ばっかかけて悪いねぇ。それに泊まり込みだからねぇ」
「いえいえ、むしろよく思ってますよ」
私がいなくなれば、平井さんただ一人になってしまう。何かが起こっちゃいけないから、私は自分で泊まり込みで働くことに決めた。
「娘たちにもいつも迷惑ばっかかけて、申し訳ない」
「…有美[ユミ]さん(娘)たちは迷惑だなんて思っていませんよ」
「そもそも私が旅行に行ってこいって言ったんだよ。私の世話ばっかじゃ人生おもしろくもなんともないだろう?でも結局美優ちゃんにまた迷惑かけて…」
「私も迷惑だなんて思ってませんよ。こうやって平井さんと話すのいつも楽しみなんですから」
なんて優しい人なんだろう。自分のことよりも他の人のことを真っ先に考えてる。
「そう言ってくれると嬉しいねぇ。私も美優ちゃんと話せるのが楽しみなんだよ」