はろう。ぐっばい。
朝の散歩。
しあわせという意味の名前の女の人がいました。
だからといって、幸せという訳でも、不幸せという訳でもありませんでした。
彼女は海の近くに一人で暮らしていました。
黒い髪が肩まである、水色のワンピースがよく似合う女の人でした。
海の匂いと波の音が好きで、人ごみとにんじんが嫌いでした。
ある朝、いつものように砂浜を散歩していると、大きな巻貝が転がってありました。桜色できれいな渦を巻いた貝でした。
「あら、あんなところに貝が」
そう思って近づくと、その大きさは彼女の体ほどもありました。
「とても大きな貝ね」
巻貝の渦の中をのぞいてみましたが、中はただ真っ暗で、どうやら空っぽのようでした。
空っぽなのはなんだか寂しい気もするし、淡い桜色は彼女の好きな色でもあったので、女の人はその中に入ることにしました。足から入って顔と両手を出すと、巻貝はちょうどしっくりくる大きさでした。
彼女は少し嬉しいような気がして、鼻歌などを歌いながら両手だけを使って、這うように砂浜を散歩しました。
さっきまで無かったはずの貝が下半身を覆っていて重い上に、さっきまで出来ていたはずの二足歩行が出来ず、なんだか少し不便なような気もしましたが、でもやっぱり嬉しいので、鼻歌を歌いながら、散歩を続けました。
「私は今日からヤドカリね。悪くないわ」
そんなことを思っていたとき、海の中からなにか肌色のものがこちらへ向かって走ってくるのが見えました。だんだん近づいてくるそれをよく見ると、どうやら人間のようでした。裸のおじさんが、股間を両手で隠し、こちらへと走ってくるのでした。
だからといって、幸せという訳でも、不幸せという訳でもありませんでした。
彼女は海の近くに一人で暮らしていました。
黒い髪が肩まである、水色のワンピースがよく似合う女の人でした。
海の匂いと波の音が好きで、人ごみとにんじんが嫌いでした。
ある朝、いつものように砂浜を散歩していると、大きな巻貝が転がってありました。桜色できれいな渦を巻いた貝でした。
「あら、あんなところに貝が」
そう思って近づくと、その大きさは彼女の体ほどもありました。
「とても大きな貝ね」
巻貝の渦の中をのぞいてみましたが、中はただ真っ暗で、どうやら空っぽのようでした。
空っぽなのはなんだか寂しい気もするし、淡い桜色は彼女の好きな色でもあったので、女の人はその中に入ることにしました。足から入って顔と両手を出すと、巻貝はちょうどしっくりくる大きさでした。
彼女は少し嬉しいような気がして、鼻歌などを歌いながら両手だけを使って、這うように砂浜を散歩しました。
さっきまで無かったはずの貝が下半身を覆っていて重い上に、さっきまで出来ていたはずの二足歩行が出来ず、なんだか少し不便なような気もしましたが、でもやっぱり嬉しいので、鼻歌を歌いながら、散歩を続けました。
「私は今日からヤドカリね。悪くないわ」
そんなことを思っていたとき、海の中からなにか肌色のものがこちらへ向かって走ってくるのが見えました。だんだん近づいてくるそれをよく見ると、どうやら人間のようでした。裸のおじさんが、股間を両手で隠し、こちらへと走ってくるのでした。