【短編】少年A・少女A




俺の周りはろくな奴がいない。



父は政治家だ。



父は自分の成績しか見てなかった。



一度だって俺自身を見たことなんてない。



自分に有利な方へ俺を利用している。



一度だって愛されたことなんてない。



まぁ俺も愛したことなんてないが。



降り積もる感情は『憎しみ』だけ。



何回殺してやろうと思ったか分からない。



何回カッターやナイフを見て、殺人衝動にかわれたことか分からない。



自分の地位と名誉だけを考えて育て上げてきた息子がどれだけあんたを殺してやろうと思ったか……。




「ただいま」




でも………




「お帰りなさいませお坊っちゃま。」




もういいんだ。




「父さんは?」




もう………




「お二階の寝室だと思われますが…?」




我慢しなくて………。




「そうか。」



そう呟くと、広い玄関に丁寧に靴を脱ぎ、スリッパには履き替えず、ゆっくり階段を上がっていった。



少年は不気味なほど笑っていた。



今まで見たことがないぐらい楽しそうに………。








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