短編《Who don't yet look to you?》
 時間ごとに演出を変えているのだろう。

 ピアノと弦楽器で甘いクリスマスソングを奏でていたかと思えば、大道芸のように人形を使って腹話術やらパントマイムを披露していたりしている。

 しかしそれも夕方になるにつれ、だんだん足を止める人の姿も少なくなり、ギャラリーは数える程しかいなくなった。

 そのわずかながらのギャラリーを前に、ピエロの扮装をした人が風船で色々な形を作り出している。

 動物を模した物だったり、飛行機だったり、あっという間に作り出されていく様子はまるで魔法のよう。

 もっと近くで観たい。

 そう思ったあたしは、帰ろうとする人達に逆行しながら、そのピエロのそばまで近付いていく。

「……あの」

 考えるより先に言葉が出ていた。

「あたしにも何か作って貰えますか?」

 小さな女の子にピンクの風船のウサギを渡していたピエロは、驚いた様に一瞬目を大きくした後、少し目を細め大袈裟に頷いてみせた。



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