短編《Who don't yet look to you?》
「これ……あたしに?」

「さっきの風船のかわりに……ならない、よね?」

 そう言っておずおずとフラワーブーケを引っ込めようとする手から、あたしは可愛い花束を受け取る。

「可愛い。こんなの初めて貰った。……あと、ピエロが喋るのも初めて聞いちゃった」

「……あ!」

 ピエロは慌てた様子で、今更ながら口許に人差し指を立てている。

 一人でイブを過ごすのも悪くないな……。改めてお礼を言って帰ろうとした時、ピエロが思いがけない言葉を口にした。

「……あの、もし良かったらご飯でも食べに行きませんか?」

「え……?」

「あ! えと、ずっとそこに立ってたし、もしかしてお腹空いてんじゃないかって気になってて!」

「……知ってたの?」

「出番待ちの間に見掛けて……。あっ! でもこんなナンパみたいなんじゃ嫌ですよね!?」

 さっきまで華麗に風船で、色々な魔法を見せていた器用さとは対照的なくらい不器用な誘い文句。



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