ロ包 ロ孝 3
「只今戻りましてございます」

「おお宗助、欣治。難儀であった!」

「いえいえ、思いの外難なく事が運びました」



 人ひとりがやっと通れる程の裂け目から入ってきた2人を眩しそうに見やりながら義政はねぎらいの言葉を掛ける。



「これで里の連中への気後れをせずとも良い訳じゃ。我等には我等の大儀が有る」

「惣の掟を守らず、寄り合いにて我等の処遇を取り決めなんだあやつ等に当然非がございます」



 義政は宗助に役割を与える事に依って、あらぬ方向へ暴走するのを留(トド)める算段だったのだ。



「いつまでもこんな暗い窖(アナグラ)の中に閉じ籠められているのは癪だからのぉ。しかし宗助のお陰で足掛かりは得た」



 再び表舞台に戻れる日迄、術の研鑽に励もうではないか。という義政の言葉を受け、鬨(トキ)の声を上げる一同。



  カランコロンコロンッ!



 しかし、突然鳴り響いた鳴子の音にその場は水を打ったように静まり返り、篝火も揺るがない程の緊張が席巻した。隠れ家に続く小路の入り口に仕掛けてあったからくりを、何かが踏んだのだ。

その挙動が滑車を介して延々と隠れ家に運ばれ、今も鳴子は揺れている。


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