ロ包 ロ孝 3
「猪でも出たのでしょう。前もこういう事が有ったではないですか。念の為見て参りましょう」

「貞吉ひとりで大丈夫なのか? 付いて行こうか?」

「ご心配には及びませんよ、頭。様子を見て参るだけですから」



 貞吉はそう言って出て行ったが、皆の心は一様に嫌な予感で支配されている。それは夕暮れ時の通り雨がごとく、一同の肝を冷やして行った。



「大事(オオゴト)になりそうな気がします」

「うむ、あの鳴り……猪の仕業では無いと思うが」

「頭領様! やっぱり私も様子を窺って参ります」



 義政が頷くが早いか、若衆頭の宗助は窖を後にしていた。



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 宗助は獣道に沿い、目にも止まらぬ速さで貞吉を追った。



  スタタタタタ



「! 貞吉っ!」

「か、しら……」



  カシュッ カカカッ「ぐあっ!」



 貞吉が賊に倒されるのを目にして動転した宗助は、放たれた手裏剣をすんでのところでかわし切れずに腕を射止められていた。



「この手裏剣は……。うぬ等、伊賀者!」

「ふふ、お主等はもう袋のネズミよ。こやつは貞吉と申すか? 可哀想に。達磨のようになっておるわ」


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