ロ包 ロ孝 3
 伊賀忍法『鎌鼬(カマイタチ)※』に依って四肢を切り飛ばされた貞吉の屍(カバネ)は、傷口から出た夥しい血が作った血溜まりの中に有った。



「お主等もこやつと同じよ。我等には手も足も出んわ。カッカッカッカ」

「貴様貞吉を足蹴にするな! 糞っ、ぬ……ぬがぁっ!」 ベリベリッ ブバッ



 伊賀忍が貞吉の亡骸を穢すのを堪えきれず、立木に射止められた腕の肉を自ら引きちぎり、宗助は足を引き摺りながら窖に向かった。

足を悪く見せる事で油断させ、あの崖の足場に賊を誘い込んで、一網打尽にしようと考えたのだ。



「あやつ、脚がいかれておる。あのまま泳がせて根城を抑えるのじゃ。追えっ!」

「はっ」



 宗助は地獄耳の【朱雀】を使ってその様子を聞いていた。



「うぬ、この様子では多くて5人。奴等を率いている者は屠れまい。フゥゥゥウウ」



 のろのろと移動して賊を引き付ける戦法から一転、宗助は三倍力の【者】を使い。直ちに窖へ戻っていた。



「どうした! 貞吉は?」

「殺られました。伊賀者です」



 先刻手裏剣で受けた傷に巻き布をしながら宗助は答える。



「なんと! あやつ等迄もが!」

「鎌鼬で手足をもぎ取られて……。追っ手が来ます。5人です」


※ 鎌鼬(カマイタチ)
細い鋼鉄製の針金を身体に巻き、一気に引き絞ってそれを千切り取る術。


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