ロ包 ロ孝 3
 急を知らせたカラクリの場所に駆け付けてみると、案の定敵は姿を隠し、その身を潜めていた。



「やはり聞かれてしもうたか。【朱雀】を使え。きゃつらの息遣いを聞き分けるのだ」

「はっ、喜八様!」



  キィキィキィィィィイ



 【朱雀】が賊の声音と重なると、押し殺した会話が聞こえてくる。



『……甲賀のたわけが仕掛けたカラクリを踏み抜いてしもうたから追っ手が出たのだ』

『しかしあやつら、あないな大声を上げるとは。忍びとも思えぬ不用心さよ。案外容易いやも知れん』

『いや侮るでない、あやつらの術を見たであろう。猛り狂う龍のようじゃった』



 【朱雀】を解いた喜八は思いを巡らせた。「ここで伊賀者を一網打尽にするのは容易い。しかし何故今きゃつ等が我々を襲撃して来たのか、見定めねばならない」と。



「皆は些か面妖だとは思わぬか?」

「喜八様、【前】ですか? 【列】ですか?」



 功を焦り、今にも術に掛かり兼ねない仲間を宥めながら喜八は続けた。



「いや、きゃつらを捕らえて裏を探る」

「そんなっ! 窖の場所を教えてしまう様なものです」

「里での扱いが様変わりしたすぐ後に伊賀者迄が襲って来る……都合良過ぎるとは思わんか?」



 皆ははっとして顔を見合わせ、大きく頷いた。


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