ロ包 ロ孝 3
 相手はまだ全力で自分達を狩る迄には至っていない。その心には僅かな隙が生まれている筈だ。



「ムゥゥ、ムゥゥゥゥウン」



 そして脱力の【白虎(ビャッコ)】を放つ。



「うわぁぁ、なんだ?力が入らんぞ?」

「うぬぬ、これが高峰の術か……ちょこざいな」

「これでは大首領も御し兼ねる訳じゃ」



 喜八は出来るだけ息を長く、細く漏らしながら【白虎】の効きを長引かせる。



「こら綾乃。何をするっ!」

「あたいが聞きたいよ。同じ甲賀の里に育ったあたいらに、何の恨みがあんのさ」



 綾乃は【白虎】で脱力している大人二人の手足を次々に縛り上げた。



「もういいよ、きや兄ぃ(キヤニイ)」

「はぁっ、はぁっ、もう暫く長かったら死ぬるところだ」



 長い間術を掛け続けていた喜八は息も絶え々えになっている。



「それにしても伍作どん、甚平どん。どうして……」



 彼等を追跡していたのもやはり、幼い頃より見知った大人達だった。



「お前等の術はな、危うき事この上なしと大首領がご判断召されたのじゃ」

「そんな。お屋形様をお護りする為の我等が秘術なのに……」



 綾乃が二人に猿ぐつわを咬ませていると、



  スサササササッ



「綾乃! 新手だ」

「違う。姉様だ」



  タタタ ズサッ



 風のように駆けてきた女忍びは二人の前でぴたりと足を止めた。



「喜八様、綾乃。お怪我は」



 後からやってきたのは梅。綾乃の姉である。



「姉様!」

「梅、綾乃が浅傷を負わされた。傷は縛ってあるが」


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