ロ包 ロ孝 3
「ここは我等高峰忍びのそれこそ偲びどころよ。里から一旦は離れて、ほとぼりが冷めるのを待つしかあるまい」

「頭領は我等に尻尾を巻いて逃げ出せと仰せかっ!」



 一番血の気の多い若衆頭の宗助が、また立ち上がって捲し立てる。



「宗助、お前の荒ぶるその意気。我等が再起その刻まで、懐にしまっておけ」

「頭領様!」「旦那様……」



 更に喜政は続ける。



「儂とてこのままおめおめと惜敗したまま居ようとは思わん。機を窺うのじゃ」



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 若衆頭の宗助は、領主である六角義郷(ロッカクヨシクニ)の屋敷にやって来ていた。



「この書状を以て我等が意向を御屋形様にお伝えするのじゃ」

「しかし頭。直訴は即、打ち首獄門の大罪では?」

「駕籠訴を試みた者が盗賊に見誤られて手打ちにされたり、制止を振り切って領主の屋敷内に足を踏み入れた者が成敗されたりはしているようじゃが……。

直訴そのものは罪咎(ツミトガ)の類いではない。要は手筈じゃ」

「流石我が高峰忍びの若衆頭。それでは大首領にも口を利いて頂けるのかのぉ!」

「首尾良く事が運べば……じゃがな。

 お頼み申し上げる!」



 宗助は門番と対峙する。


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