X'mas Night[短篇]
「わっ…」
近づくにつれて
増えてくる人口。
さっきからぶつかりまくってる私。
「大丈夫かよ」
「う、うん。なんとか。」
手を握る勇気はなくて
ちょこん、と哲平の服の袖を握る。
そんな私の行動に気が付いたのか哲平の歩く足が止まり私を見下ろす。
「朱実…手」
「え…ぅわっ!!」
その瞬間、誰かに背中から突撃された。
ふらふらと、よろめき、
また違う人にぶつかり、転びそうになる。
「いった…あ、あれ?」
哲平…?
やだ、もしかして
見失った??
しっかり握っていたはずの服の袖は私の手にはなかった。ぐるっと見渡しても哲平らしき人を見つけ出すことが出来なくて…
「ど、どうしよ…そうだ!携帯っ」
こんなところで迷子とか…
せっかくのクリスマスなのにっ!
少し人並みから外れ、
リダイヤルボタンで哲平に電話を掛ける。
プル…プツ
ワンコールもしない内に
哲平の声が電話に響く。
「朱実、何処いんだよ!」
「ご、ごめん、見失って…」
少し起こり気味の哲平。
「だから、今何処?」
「んっと…ベンチに座ってる。花屋さんの前の。」
待ってろ、それだけ言うと
哲平からの電話が途絶えてしまった。
…私、最悪。
哲平、怒っちゃったかな?
はぁっと
溜息を吐いたときだった。