X'mas Night[短篇]
そのまま肩を抱かれ、
ぐっと引き寄せられる私。
「…哲平」
「勝手にいなくなんなし。」
見上げたら、哲平で。
私はほっと胸を撫で下ろした。
「ご、ごめんね。」
「…ったく」
はぁっと息を吐いた哲平は
私の後ろに立っていた男に視線を移す。
こ、こわ…。
鋭い視線。
怖すぎる。
「…何された?」
「え?…な、何も。」
ぐっと私の肩を抱いていた手が離れ、冷え切った私の手を包む。ぐっと力強く。
「…ちょ、哲平!」
「…。」
手を握った瞬間、
ぐるり、と回転しスタスタ歩き始める哲平。
繋がれた手によって
必然的に私も小走り。
広場にあった大きな時計に目を走らせると、イルミネーション点灯まであと5分をきっていた。
「手、掴まれてたじゃん。」
「あ、あぁ…。少しだけね。でも、何もなかったから。助けてくれてありがとっ。」
一気にツリーの真下まで
強制的に引きづられて来た私。
大きなツリーが
私達を見下ろすように立っていた。
「ムカツク。」
「え…」
小さく聞こえた哲平の声に驚いて
哲平の顔を見上げようとした瞬間だった。
ぐっと腰を引かれ、
少し強引に唇が重なった。
「んっ…!?」
ちょちょ、
周りに人、いっぱいいるのに…。
抵抗をしてみたものの
まったくの無意味。
何度も重なるその唇。
私は自然と哲平の首に手を回していた。
「は、はぁ…はぁ…」
長すぎる。
深すぎる。
「…哲平のばぁか…」
「…うっせ。」