恋のありかた


「あら?雪南と三月?」


 手がぱっと離れる。
声の主は母親だった。スーパーの袋を提げて立っていた。
家の前まで来ていた事に気付かなかった。
三月は母に駆け寄って、
いつものふざけた三月を演じていた。


「おばさーん!久しぶり!今日はご飯なにー?」
「久しぶりー♪食べてくのね。今日は、からあげにしようかな?」
「おーまじで?俺からあげ大好き。」



手を見つめる。

さっきまで握られていた手

冷めていく温度が寂しい。

聞きそびれた言葉の続き


――正直、聞くのが怖い


恋愛とは呼べない、この気持ちで

三月を縛り付けている



答えられない。




「雪南?なにしてんの。早く家に入って」

「あ……うん」





何よりも怖いのは自分だ。
< 19 / 32 >

この作品をシェア

pagetop