恋のありかた
「あら?雪南と三月?」
手がぱっと離れる。
声の主は母親だった。スーパーの袋を提げて立っていた。
家の前まで来ていた事に気付かなかった。
三月は母に駆け寄って、
いつものふざけた三月を演じていた。
「おばさーん!久しぶり!今日はご飯なにー?」
「久しぶりー♪食べてくのね。今日は、からあげにしようかな?」
「おーまじで?俺からあげ大好き。」
手を見つめる。
さっきまで握られていた手
冷めていく温度が寂しい。
聞きそびれた言葉の続き
――正直、聞くのが怖い
恋愛とは呼べない、この気持ちで
三月を縛り付けている
答えられない。
「雪南?なにしてんの。早く家に入って」
「あ……うん」
何よりも怖いのは自分だ。