恋のありかた




倉庫の扉から、外の光が洩れて私の体は明るみに晒された。
走り寄って来た唯が私を見つけるなり抱きしめた。

吐き気がしそうだ。


「大丈夫!?雪南……っ!学校に来ないし、2人で探してて…!。
 ここ、不良がよくたまってるしさ……。もしかしてと思って…。
 ひどいよ……。」


コイツ、演技派女優になれるんじゃないだろうか。

怒りと恐怖と寒さで震えが止まらない。

「おい、セツ。とりあえず俺の上着着ろ」

バサッと上着がかけられた。
背の高い三月の上着は私の体のほとんどを隠してくれた。

「あっ、私、体操服あるよ、カバンの中に。
 倉田クン、とってくれる?」

「おう。これだな。」


「ありがと。雪南、これ着て……


「離してよ!!!」


 唯の体を思いきり突き飛ばすと、唯は簡単に倒れた。
体を見られても別にかまわない。心だけでなく体も汚れた。
強がりでもなんでもいい。私は汚れている。

もう、何もかもごめんだ。


「おいっ、セツ!どうしたんだよ!落ちつけよ!」


 大声を上げた私と倒れて驚いた唯に三月が私を見た。


「ほっといて……!!ほっといてよ!もう嫌!!!」

「落ち着けって、セツ!」

「いや……っ


 言いかけた処で、三月が私を抱きしめた。離れようにも勝てない。

「離せって!!!」

「黙ってろ!お前、今の状況わかってんのか!?
 とりあえず服を着ろ。」

三月の怒鳴り声に、一瞬周りが静かになる。

「……っ、そだよ。倉田クンの言う通りだよ」

唯はいたた……と言いながら立ちあがった。

「……唯のせいでしょ!!何いい子ぶってんの!?満足したかよ!!」

「セツ!!何言ってんだよ、お前!落ちつけ!な!早く服を着ろって」

「もう構わないで!!!離してよ!三月!!!離して!!!」


無理矢理、三月を押し返す。
隙を見て倉庫から抜け出した。
辺りはオレンジ色をしていて、夕方だと一瞬で理解できた。
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