おかんの手料理 ~7人のハチャメチャ物語~
「はい、どうぞ」







 オムライス。




 僕の前に置かれたのは、オムライス。




 そうだ。僕は、母さんが作るオムライスが大好きだった。



 高級なレストランのオムライスみたいじゃなくて、チキンライスに卵を被せて、ケチャップをかけただけの、普通のオムライス。


 でも、すっごく美味いんだ。




 忘れてた……。自分がオムライスが好きってことを。一人暮らしや、バイトに夢中で忘れてた。


「どしたの。食べないの?」

「あっ、食べる食べる」

 スプーンですくって、口に運んだ。



 優しいケチャップの香りが口の中に広がる。


 目頭が熱くなった。

 涙が出そうになった。



 もう一口。







 今にもこぼれ落ちそうな涙は僕の視界をぼやけさせた。


 必死でこらえたが無理のようだった。
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