【短編】終電時刻




澄んだ綺麗な声だった。



その声で男は自然に声のする方へ振り返っていた。





「すみません。ちょっとお聞きしたいんですけど、いいですか?」






男の後ろにいたのは、黒いスーツ姿の女性だった。



歳は同じぐらいに見えた。



自分は今荒れ放題な顔なので相手はそう思っていないと思うが。



美人とまで言わないが、キチッとしている服装や髪型が清楚な雰囲気をかもしだしていて、綺麗な人だと思った。



しかし、そんなキチッとしている人がこんな真夜中に駅にいるのは少し変な気がした。



勝手に「残業だったのか。」と思うと、少し親近感を覚えたのだが。





「はい。なんでしょうか?」




疲れているのを隠すように、なるべくハキハキと聞いた。






「貴方も…終電に乗るんですか…?」














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