白衣の先生
「ひろちゃん、なぁに?」



準備室に入るなり、響子は先生に笑顔を向けた。



「んーとね、楽しい時期だからあんまり言いたくないけど、遅刻だけはしないでね。今日のはセーフだけど、他の人も真似して遅刻されちゃうと困るから……。でも、先生も高校生のときは楽しかったし、友達とのお喋りも、授業サボったり、いろんなことが輝いてたけど……ほどほどに……よろしくね」



ひろちゃん……

本当に私たちの事、考えてくれてるんだね。



本当に、すべてが楽しい時間。

休み時間にお菓子を食べたり、お喋りしたり、授業中に手紙交換したり……



キラキラしたかけがえのない時間。



「ありがとうございます」



ひろちゃんにお礼を言いながら、音楽室に戻った。



「景子ちゃん、響子ちゃんおかえり」

同じグループの由梨菜が、クリっとした目を細め微笑んだ。


「怒られちゃったの?」


「ううん。これから気をつけてって」


良かったねと言いながら、由梨菜は楽譜を開いた。



私たちのグループは、5人。

偶然にも5人とも、吹奏楽部経験者。

私と響子は現役部員。

私がトランペット担当、響子が打楽器担当。


3人は中学生までで辞めちゃったけれど、由梨菜が元フルート担当、あとの2人が、金管楽器のカタツムリみたいなホルンと、大きい弦楽器のコントラバス。


楽器はバラバラだけど、響子が編曲をして、なんとか楽譜が出来た。







< 62 / 81 >

この作品をシェア

pagetop