白衣の先生
「ほら、早く行きなさい」



生徒がゾロゾロと教室に向かう中、春の風に白衣をなびかせながら立っている先生は、華麗に舞う桜のようだった。



しかも……今日は、細いレンズの眼鏡をかけている……。



あぁ……写メ撮りたいくらい……。




「景子ちゃん……もしかして……」



立ち止まったままの私の顔を、由梨菜が覗き込んだ。



「ん……ん?」



「沢田先生に見とれてる?」



「なっ……」





こういうとき、正直すぎる自分が恥ずかしい。



かぁっと顔が熱くなる。



「そうなの!?ほんとに!?」



あぁ……恥ずかしいよぅ……。


私は、何も言わず小さく頷いた。



「キャー!!なんかドキドキしてきた」



今度は、由梨菜が私の腕を引っ張った。



「沢田先生、おはよ!!」



「はい、おはよう。安藤さん……体調は大丈夫ですか?」



先生は腰を屈めて、私の顔を覗き込んだ。



「はい。もう、大丈夫です」



「無理はしないようにね。ほら、2人も早く教室に行きなさい」



先生は、私と由梨菜の頭にポンと手を置いた。





「はぁーい。景子ちゃん行こっ!」



由梨菜と一緒に、人が多い廊下を全速力で走った。






「こらー!廊下は走らない!!」



背中に先生の声が届いた。



「景子ちゃん……良かったね!いろいろ恋バナしようねっ!」



由梨菜は、にぱっと微笑んだ。





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