白衣の先生
休み時間の廊下で、先生とすれ違う。



「あ……そうだ、安藤さん、放課後に月曜日の委員会議題を提出してくれますか?」


「はい、分かりました」


先生は、腰を屈め私の顔に近付く。


「急で他の休み時間、潰してしまうかもやけど……よろしく頼むわ」


「はい……」


眼鏡の奥の瞳と、甘い掠れた声に、ドキンと胸が早鐘を打つ。


「やっば……」


赤くなる頬を押さえると、隣りを歩いていた響子が、にやりと笑う。


「お嬢さん、立派な恋する乙女やな」


「もう、やめてよ……」


ニセ関西弁の響子の背中を、トンと叩く。








いつもは、嫌々やっていた委員会の議題報告書も、あらゆる休み時間を使って、放課後までに書き上げる。




終礼後、急いで保健室に向かう。



「失礼します!」


ガラッとドアを開けると、窓に座っていた先生は、にこっと笑った。



「おぉ、早かったなぁ」


「こんなんで大丈夫ですか?」


議題報告書を渡すため、至近距離に近付くと、ドキドキと胸が騒ぐ。


「あぁ、ええよ。完璧や。ありがと」


頭をポンと撫でられ、顔が熱くなってしまう。


「せ、先生……なんで今日は眼鏡なんですか?」


どぎまぎする胸をごまかすように、髪を整えながら、へへへと笑い後退りをする。


「ん?今日なぁ、コンタクト入らなくてな」


細い眼鏡のフレームをなぞる、細い指。


眼鏡の奥の、綺麗な瞳。



また、私の心臓がドキドキ鳴る。



先生……好き。



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