白衣の先生

先生と私

「なんや~?そないじーっと見て」


照れるやろ~と、先生は、髪をかき上げながら笑った。


「白衣に眼鏡は、安藤にとって、どストライクってやつか?」


未だにクスクス笑う先生に、何か言い返したいのに、私は顔を赤くしながら黙るばかり。



「せんせ?」


「ん~?なんや?」


片目を瞑り、笑いすぎてひぃひぃ言う先生の髪を、一瞬だけくしゃっと触った。


「じゃ、さようなら!」



してやったり。


いつも、ドキドキさせられてるお返し。



はははと笑いながら、1度も振り返らず保健室から飛び出した。











「な……なんやあいつ」


1人残された教師は、ははっと笑った。


「廊下は走るなよ」



外を眺めた教師の声の後



「コラー!廊下は走るんじゃない!」


学年主任の怒鳴り声が聞こえた。



「言うてるそばから」


笑いながら外を眺める教師の顔は、夕日とは別の赤みに染まり、どことなく幸せそうだった。








はぁはぁと、自分の息遣いが煩く聞こえる。


先生の髪、触っちゃった……。


サラサラの髪は、細くて柔らかかった。


「私なんて、昨日枝毛発見したのに」


小さくほほを膨らませると、また、にんまりと笑った。



先生……好きなの。



私ね、先生が好き。



もっと、その髪に触れたい。

私の髪にも、触れてほしい。

私の頬にも、触れてほしい。


それから

先生の、大きな背中に、飛びつきたい。






「きゃーっ」

夕日に染まった空間で、少女は1人小さく悲鳴を上げる。



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