恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「郁巳ちゃん、ほっときな」

渋い表情でマスターが言った。

「剛のヤロー、目立ちたがり屋だから、きっと今日は毬ちゃんが主役なのが面白くねぇんだろ」

「でも……」

心配そうなおねーさん。

「いーから、ほっとけ、ほっとけ。…ったく、困ったヤローだ。誰に似たんだか」

「お前さんだよ!」

おばさんのツッコミ炸裂。

「え? オレ?」

マスター呆然。


「まぁ、とにかく今日はせっかくの誕生日なんだから、マスター手作りのケーキでも食べて機嫌直せよ、毬ちゃん」

こういう険悪な雰囲気になったときは、いつも誠志郎さんが空気を読んでくれる。

「おぉ、そうだ、そうだ。毬ちゃん、遠慮しないで全部まるっと食べてくれよ」

「マスター、ありがと♪」

「じゃあ、あたしが切ってあげるよ」

そう言って、おばさんが包丁でケーキを切り分けてくれた。
< 10 / 227 >

この作品をシェア

pagetop