恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
秘密にしたのは、自分の母親をちゃんと「母さん」と呼ぶこともできないムスメが、“母親の人生を引き継ぐ”なんて言うのは恥ずかしくてカッコ悪いことだと思ってたから……。


「さぁさぁ、湿っぽい話はこれくらいにしてさっさと検査をはじめようか」

「そ、そうですね、先生…」

江波さんがハンカチで涙を拭くと、あたしの心臓の精密検査がはじまった。


まずは学校でもやるような、ごく一般的な健康診断。


次に、スポーツジムにあるルームランナーのような機械の上を15分くらい歩きながら運動中の心電図を測定する“トレッドミル運動負荷検査”。


続いて“心エコー(心臓超音波)”の検査に進み、ベッドに横になったあたしは胸に棒状のものを押しあてらえた。

棒の先からは超音波が出ていて、モニター画面上にレントゲンのように、あたしの心臓が映し出されるんだ。

ドックンドックンと動き続ける心臓の中で、赤く映し出されている部分が心臓内の血液の流れなんだそうな。

でも願わくば自分の心臓なんて見るもんじゃないと思う。

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