恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「ありがとう。いただきまァ~す♪」
マスター特製のバースデー・ケーキは、見た目ちょっと怖そうな元ヤンキーが作ったとは信じられないような、かわいいデコレーションがてんこ盛り状態だった。
そして“パクッ”とひとくちクチに入れると、甘×2の生クリームがクチの中いっぱいにとろけてしまう頃には、さっきまでの剛に対する怒りでカッチンカッチンになっていたあたしの感情もすっかりトロトロにとろけてしまっていた。
「おいひぃ~♪ すっごくシアワセな味がするぅ~♪」
顔の筋肉がユルユルになってしまって、表情に締まりがなくなってるのが分かる。
「そいつァ、よかった♪」
ちょっと怖そうなマスターの、ものすごくやさしい笑顔だった。
「こんな美味しいケーキが食べられるんなら、いっそ毎日が誕生日だったらいいのになァ~♪」
「へ? 毎日が誕生日だったら、毬ちゃん、あっという間に“おばあちゃん”だよぉ」
おばさんの意地悪なツッコミに…、
「それはイヤ!」
…って真顔で答えたあたしを見て、店中のみんなが大爆笑した。