恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
今のあたしにできるのは、大きな声を出すことくらいだった。
「アレ? 誰かいるの?」
更衣室の外の廊下から、女のヒトの声が聞こえてきた。部屋の外まで、あたしの声が聞こえたんだと思う。
「ハーイ、いま行きまーす」
江波さんは部屋の外に向かって返事をすると、ドアに向かって歩き出しながら、振り向いて「出ましょう」とあたしに言った。
「あ、はい…」
彼女に続いて歩き出すあたし。
「ごめん。イキナリ“別れて”なんて言われても、やっぱり無理よね? 仕事が終わったら、後でちゃんと説明するから、家に帰って待ってて。今夜は遅くならないと思うから」
「でも今夜は…」
「悪いけどデートの話はなかったことにしてちょうだい」
「そんなの、って……あんまり一方的すぎませんか?」
「ごめんなさい。後で話すから」
そう言うと彼女は足早に更衣室を後にした。