恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
たしかにね、幼なじみが遠い存在になってしまうのは、やっぱり淋しいことだろうな、って思う。
でも、もし彼のいうとおりだとしても、結婚したら彼が自分の前からいなくなってしまうことは、江波さんにだって最初から分かっていたはず。それがイヤなら、あたしに彼を紹介しなけりゃよかったんだ。
自分から彼を引き合わせたクセに、なんで今になって急に引き離そうとするんだろ?
「幼なじみがいなくなるのが淋しいから、って……それが“別れてほしい”って言った本当の理由なのかな…?」
「他にどんな理由がある、っていうんだい?」
「江波さん……勤さんのことを“愛してる”って」
「そりゃあ、中学の頃からの幼なじみだし、タダの友達以上の感情……つまり、ある種の愛情みたいなものくらいはあると思うよ」
「そーいうんじゃなくて、男と女の恋愛感情みたいな……」
「ひょっとして、毬さんは“マリッジブルー”になっちゃったのかな?」
「マリッジブルー…?」
「マリッジブルーだから、つい余計なことまで考えちゃって、ちょっとしたことでも気になって不安でしかたない。まちがいないよ」