恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
攻守逆転だ。
試合の残り時間も少ないし、もしこのまま相手チームにシュートを決められでもしたら、ウチのチームの負けは確実……。
「剛のバカ! 監督の言うこと聞いて、ちゃんと知之くんにパス渡さないから、こーいうことになるんだよ!」
あたしはイライラしながら腕時計を見た。
「もう試合時間は終わってんじゃん!?」
「“ロスタイム”に入ってるのよ。もう、いつ試合終了のホイッスルが鳴ってもおかしくないわ」
視線はグラウンドに向けたまま、おねーさんが言った。
「ワアアァァァー!」
そのとき相手チームの応援席が沸いた。
フィールドでは今まさに相手チームの選手が、ウチのゴールに向かってシュートを放った瞬間だった。
ディフェンダーと呼ばれる味方ゴールを守る選手が一人もいないスキマを狙っての、相手チームからのシュートだった。
“もう、おしまいだぁーっ!!”
あたしはそう思ったし、他のみんなもそう思ったにちがいない。