恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「桐矢っ…」
「オレ様も明東大の戦神(いくさがみ)と呼ばれた男だっ! お前にばっか、いいカッコさせてたまるかよっ! ココでオレ様が名誉挽回してやるぜーっ!」
「誠志郎さん、やめて! さっきアイツの身勝手な個人プレーでひどい目に遭ったばっかじゃん! アイツじゃなくて他のヒトにボールを渡しなよ!」
誠志郎さんの耳に届くとは思えなかったけど、それでもあたしは叫んでた。
だけど…、
「頼んだぞーっ!」
誠志郎さんは剛に向かってボールを勢いよく蹴飛ばした。
「なんで!? なんでアイツなんかにっ…」
「任せろっ!」
放物線を描きながら飛んでいったボールを足で見事キャッチした剛は、相手チームのゴールに向かって向き直ると、そのままシュートを放った。
まさかのロングシュートだった。
すでにロスタイムに突入していて、いつ試合終了のホイッスルが鳴ってもおかしくない状況の中では、ドリブルをしながら相手陣地まで攻めていく時間がない、と思ったんだろうけど、このロングシュートは無謀だとみんなが思ったはず。