恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
涙でにじんだ視界の中で、あたしを見つめる誠志郎さんが見えた。


次の瞬間…、

「クソォーっ!」

守備の選手の誠志郎さんが、はじめて攻撃をした。意を決したような猛烈なタックル。

おかげで拉致られる寸前だったあたしは脱出することができた。

「あ、ありがとう」

ようやく声が出た。

「いいから早く逃げろ!」

いつも涼しげな顔をしている誠志郎さんの、はじめて見る怖い顔だった。

「何があってもマリヤを死守するんだ!」

「分かった! 俺も覚悟を決めた!」

2人がかりで3人の選手たちに挑んでいく剛と誠志郎さん。


だけど2対3では勝てるはずもなく返り討ちに遭ってボコボコに殴られて、2人の鼻と口からは赤黒い血が流れ出た。

怖くなったあたしは泣きながら声をかぎりに相手チームの選手たちに頼んだ。

「やめてくださいっ! 剛も誠志郎さんも死んじゃうよっ! もう、やめてっ!!」
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