恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
彼の言い方はどうも歯切れが悪い。
「なぁに? なんか言いにくいことでもあるの?」
「………」
「ちょうど今まわりに誰もいないし、もちろん誰にも話さないから、あたしにだけカミングアウトしてよ」
「フッ…そうだな」
やっと彼が笑ってくれた。
「…俺が弁護士になろうとした本当の理由は……毬ちゃんに俺の……俺の……嫁さんになってほしい……って……」
「え…」
思わず足が止まってしまった。
「そう……思ったからさ……」
彼はそのまま杖をつきながら進んでゆく。
“カツ…、カツ…、カツ…”
「………」
あたしには口に出すべき言葉が思いつかなくて、黙って彼のあとに続いて歩き出した。